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『京の街』



曲を作る上で一つの問題がある。

それは「いつそれを完成させるかということ」だ。

僕は曲の完成を自分で決めるので、極端な話ギターやピアノを弾きながら歌った最初のテイクで完成だと自分で言ってしまえばそうなるし、それからどんなに音を重ねていってもまだ完成じゃないと言えば永遠にゴールはこない。

長く作業を続ければそれだけ良いものが出来るかというとそんなことは無い。

もちろん曲によっては時間をかけて作った方が良い場合もあるが、だらだらとやっていると新鮮さが失われてしまう場合もある。

サラダ用の曲がありビーフストロガノフ用の曲もあるのだ。

作っているときにこの曲はどっち向きの曲かというのがわかれば問題はないのだけど、大抵それがわからない。

だから今までもまだ煮込み足りないものを出してしまったり、鮮度の落ちた野菜を出してしまったりしている。

今回リリースする新曲『京の街』も大分時間がかかった。

大分前に今とほとんど変わらない状態にはなっていたのだが、何かが足りないんじゃないかとちょこちょこと作業を続けているうちに長い時間が経ってしまった。

最後の編集をしている間はちょうど自粛期間だったので、この曲を聴きながら数年前京都に行った時のことを思い出していた。

それは桜が満開の春で僕は清水寺から宿泊先のホテルに帰るところだった。

夕暮れ時、僕は裏路地に入って細い坂道を下っている。

右手には五重の塔、観光シーズンにも関わらず人影はまばらで一人の僕はふと寂しくなる。

きっと今年はもっと人がいなかったのだろうなと思う。

それでも今年の桜もきっと綺麗だっただろうし、来年も綺麗に咲くだろう。

そんなことを考えてこの文章を書きながら、また何か音が足りない気がしてきた。

弱ったね。

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